今回、ようやくトリッシュ・ウナの定番スタイルを形にすることができました。衣装のオーダーメイドからウィッグのカットまで約1か月かけて準備を進めましたが、完成した写真は思い描いていた理想そのものの仕上がりになりました。
ウィッグに関しては、彼女を象徴する鮮やかなピンクの髪が最大のポイントです。マットな耐熱ファイバーを選び、頭のサイズに合わせて土台をしっかり整えた上で、頭頂部にしっかりとふかしを入れてボリューム感を出し、毛先は細かなレイヤーを入れてカットすることで、振り返った際のフェイスラインがシャープに見えるよう工夫しました。メイクは極端に誇張せず、アースカラーのアイシャドウで彫りの深さを演出しつつ、発色の良い赤リップを合わせることで、ナポリらしい情熱的で凛とした強さを覗かせました。
衣装は今回の最大のこだわりです。淡いトーンのホルターネック&バックレスドレスは型紙作りが非常に難しく、首元から肩にかけてラインストーンやビーズチェーンが原画のように美しいネット状に垂れ下がるよう、手作業で無数の固定ポイントを縫い止めました。裾のチュールはランダムなアシンメトリーカットにしており、歩いたり腰掛けたりした際も重たくならず、自然なドレープを描いてくれます。
撮影ロケーションの空間づくりにも力を注ぎました。深紅のベルベットカーテンとダークブラウンのチェスターフィールドソファが置かれたクラシックな洋館風の部屋を選び、背景にはゴールドの彫刻燭台、蓄音機、油絵、重厚な洋書をレイアウトし、テーブルにはラム酒と琥珀色のグラス、葡萄を配置しました。これらの小道具は単なる背景の装飾にとどまらず、グラスを手にして振り返る瞬間に、気だるくもどこか危うい魅力的な空気感を一気に引き立ててくれました。
撮影機材はα7C IIと35mm F1.8を使用しました。35mmという画角は限られた室内空間でも程よく周囲の情景を写し込めるためとても気に入っています。被写体の質感を際立たせるため、カメラマンはサイド逆光のライティングを採用し、斜め後方からの温かみのある光が肩やドレスのラインストーンに美しいエッジライトを描き出し、肌の透明感をぐっと高めてくれました。明暗差が大きいためシャドウ側には柔らかな光を補い、瞳のキャッチライトや繊細な陰影のグラデーションもしっかり残しています。
背中が大胆に開いたデザインのため、少しでも猫背になると肩や背中のラインが崩れてしまうので、ポージング時の姿勢維持にはかなり気を配りました。肩甲骨を寄せて背筋を伸ばし、脚を綺麗に伸ばしながらソファのカーブを活かしてしなやかなボディラインを表現しました。座りや膝立ちを織り交ぜることで、身体のニュアンスを通じた写真の物語性を深めています。
メイク、スタイリング、ロケーション、ライティングのすべてが、トリッシュの持つ気高く自立していながらもどこか憂いを秘めた佇まいに寄り添うよう努めました。構図から色彩設計に至るまで、自分自身とても納得のいく素晴らしい作品になりました。