今回のロケーションには、生活の温もりが息づく昔ながらの駄菓子屋を選びました。リアルな街の空気感は、スタジオ撮影とはまた違った生き生きとした物語性を与えてくれます。放課後の日常的な空気感を演出するため、スタイリングにはこだわりのセーラー服をセレクト。トップスは短めのクロップド丈でウエストを覗かせるデザインにし、ネイビーのセーラー襟には白いラインとワインレッドの胸元リボンをセット。ボトムスにはダークグレーのチェック柄プリーツミニスカートを合わせ、足元は白のミドルソックスとエナメル調の黒いダブルストラップ厚底メリージェーンで引き締めました。色鮮やかな商品が所狭しと並ぶ陳列棚の前だからこそ、制服のクラシカルなモノトーンと深紅の配色が際立ち、洗練された存在感を放ちます。
撮影機材には中判ミラーレスのHasselblad X2DIIを投入。複雑な室内照明下における中判センサーの階調表現とダイナミックレンジの広さはまさに圧巻でした。個人商店特有の無機質な蛍光灯照明は顔色をくすませがちですが、X2DIIの卓越した色再現力により、寒色系の光の中でも肌のテクスチャがみずみずしく透明感たっぷりに描き出されました。構図作りにおいては、陳列棚に身を寄せ、通路の奥へと続く奥行き感をパースペクティブのリーディングラインとして活用。スナック菓子の棚の前でしゃがみ込み、青いパッケージのポテトチップスを手にするカットでは、商品のカラフルな色合いと被写体が美しく調和し、雑多な背景の中でも主役の存在感が埋もれることはありません。
ポージングにおいては、作為的なキメ感を排したナチュラルな所作を追求しました。お菓子を品定めしながらカメラへ無邪気な視線を投げかけたり、片手を腰に当ててペットボトルを持ちつつ気怠げに佇んだりと、日常の何気ないワンシーンを再現。ふとした瞬間に見えるカットも、現場ではミリ単位の角度調整を施しています。例えば立ち姿では身体をわずかに斜めに構えてショート丈トップスとスカートの間のウエストラインを綺麗に見せ、屈む際やしゃがむ姿勢では背筋を伸ばして脚のラインをしなやかに伸ばすことで、狭い通路でも窮屈さを感じさせない伸びやかなポージングを意識しました。
ビスケットの箱を熱心に見つめたり、冷えたペットボトルを頬に当てて涼しさに目を細めたりする細やかな仕草は、誰もが経験した放課後の情景そのものです。下校途中にふらりと立ち寄った駄菓子屋で、小銭を握りしめながらすべての棚を巡り、新発売のお菓子を眺めたり珍しいジュースを手に取ったりするワクワク感。懐事情は寂しくても、小さなお菓子一つに心を躍らせたあの好奇心こそ、青春が宿す最も生々しく愛おしいキャンパス感の原点です。
この写真集には大掛かりなプロップは一切不要でした。どこにでもある清涼飲料水やスナック菓子の袋、カップ麺のパッケージ、棚に並ぶ日用品の数々が、すでに完成された生活感を紡ぎ出してくれています。日常の息遣いそのものが、何よりも力強い視覚言語です。誰かを演じるのではなく、放課後に好きなお店でお菓子を選んでいる時の飾らない解放感を素直にレンズに預けました。何気ない日常の中に宿るきらめきをすくい上げ、お気に入りのJK制服に身を包んで駄菓子屋を巡る至福のひとときを記録する――これこそが写真表現の醍醐味だと改めて実感しています。