『崩壊:スターレイル』の花火の衣装「甘い夢の電波」作品を、ハッセルブラッド X2D II 100CとXCD 75P F3.4レンズの組み合わせで撮影したことは、機材、衣装・メイク・小道具、然して光と影の親和性を測る新たな試みとなりました。これまでの二次元コスプレ撮影、特に屋内外が混在し光の明暗差が複雑なロケーションでは、レタッチ段階でカラーバランスや肌色の補正、暗部の持ち上げに多大な労力を費やすのが常でした。しかし、今回のハッセルブラッド X2D II 100Cから吐き出されるJPEGの色彩と質感は、そのまま作品として納品できるレベルに達しており、実に快適な撮影体験となりました。
画面の中の花火は、象徴的なライトピンクのツインテール、切りそろえた前髪、そして繊細な赤系のアイメイクを再現しています。この設定を完璧に再現するため、スタイリストは黒いリボンと金属製ヘアクリップのアクセサリーを用意し、ピンクグラデーションのサングラスが最高のアクセントとなりました。頭の上にのせても、顔にかけても、一瞬でアンニュイでラフな雰囲気を引き立てます。衣装には肩出しの黒いジッパーカーディガンを選び、赤と黒のフリルヘムに黒の網タイツを合わせました。ハッセルブラッドの高い色再現性・ダイナミックレンジにより、これらの素材ごとの質感が際立ちます。特に網タイツの網目のディテールは、明かりの強い現場でも暗がりでも非常にクリアで、高コントラストなエッジのボヤけやトーンジャンプ(階調破綻)は一切見られませんでした。
最初のロケーションにはストリートのグラフィティ壁を選びました。ピンクやグリーンのスプレーアートは色彩の彩度が非常に高く、優れた色彩処理能力を持つカメラでなければ、モデルの肌が青白くなったり緑がかって写りやすくなります。しかし、XCD 75Pレンズの背景ボケは非常に柔らかく、f/3.4の絞り値が背景の複雑なラインをまろやかに包み込みつつ、被写体(主体)の輪郭を非常にシャープに捉えてくれました。キャンディを手に持ったり、赤のメガホンをレンズに向けたりする際も、画面内の色彩の奥行き感が調和しており、ハッセルブラッド特有の深みのある赤の描写によって小道具の赤が引き立ちつつも、顔のメイクを邪魔することなく存在感を放っていました。
2つ目のシーンはプールバー(ビリヤード場)へ移動しました。ここは光の条件が複雑で、照度も低い環境です。現場の光に合わせるため、フォトグラファーはISO感度を1600〜3200まで引き上げました。正直なところ、この感度帯では小型センサーのカメラだと顕著なカラーノイズが出始めることが多いですが、ハッセルブラッドは中判センサーの懐の深さにより、暗部のノイズを極限まで抑えつつ、ビリヤード台の青いラシャ(ラシャクロス)や背景のボトル群の豊かな階調を維持してくれました。特にビリヤード台の上に座ったカットでは、モデルの自然な佇まいや差し出されたトランプ、そして画面左側に配した前ボケの遮蔽物が覗き見のような構図を作り出し、平面的な空間にドラマチックな緊張感を与えています。
さらに、75mmという焦点距離はスナップ感とバストアップ〜半身ポートレートのバランスにおいて非常に優秀です。より広角なレンズを使用した場合、プールバーの透視歪みが人物のプロポーションを歪めてしまう可能性がありますが、75Pはそのあたりのコントロールが完璧でした。撮影中、スタッフ全員でビリヤード台のまわりを動き回りながら構図を議論する中で、その和やかな空気がモデルのリラックスした表情を引き出してくれました。決まり切ったポーズを作り込む必要はなく、シャッターを切る合間の何気ないお茶目な瞬間こそが、見事にレンズに収められていきました。
ハッセルブラッド X2D II 100Cと聞くと、重量やAF(オートフォーカス)速度に懸念を抱く方もいるかもしれません。しかし実際の撮影において、この中判システムのレスポンス速度は予想を遥かに上回るものでした。メガホンを使った大きなアクションでも、ビリヤード台の上でのふとしたふり返りでも、位相差AFが瞳を正確に捉え続けてくれました。数十枚のシャッターの中で、ピンボケによるボツコマは実質ゼロでした。トーンカーブの修正やローカルマスクの作成といった複雑なレタッチ作業を必要とせず、構図のトリミングや歪み補正程度で仕上げられるワークフローは、フォトグラファーにとってもモデルにとっても大きなメリットです。
今回の撮影で強調したのは、キャラクターの「日常感」と「お茶目さ」です。決めポーズに縛られることなく、キャンディ、サングラス、トランプといったプロップ(小道具)を活用し、花火の設定にあるようなトリックスターらしい自由で気ままな雰囲気をキャプチャしました。ハッセルブラッドの優れたカラーサイエンスにより、環境光と肌色の境界線を正確に捉え、ホワイトバランスは完璧で、透明感のある血色豊かな肌、光に映えるアイシャドウのラメ感が品良く表現されました。機材が極めて優秀であればこそ、ライティングや衣装・メイク・小道具こそが主役となり、レタッチ作業は補助的な位置付けへと退くという、現代デジタル写真における「撮って出し」の美学が体言されています。
完成した作品群を眺めると、各シーンの色彩基調が高度に統一されていることがわかります。グラフィティ壁の鮮やかな色ブロックからプールバーのシックな暗調環境に至るまで、ハッセルブラッドが魅せる色彩表現には独自のロジックが存在します。デジタル写真特有のきついシャープネスではなく、まるでフィルムを通して仕上げられたかのような潤いと気品のある質感です。派手なフィルター処理に頼らずとも、ハッセルブラッド固有のカラーサイエンスだけで視覚を魅了する力があります。多くのプロフォトグラファーがこれをメイン機として愛用する理由もここにあるのでしょう。大判・中判センサーならではの圧倒的な解像度により、衣装の生地の織り目からウィッグの細かな毛流れに至るまで、極めて誠実に記録されています。この高精細な描写力が、単なるポスター的な人像写真の域を超え、まるでキャラクターの世界に入り込んだかのような没入感を与えてくれます。過度な美肌加工やフィルターは不要で、そこに存在するリアルな光と影、色彩こそが最高の装飾なのです。