蛍火虫アニメエキスポのイベント写真の撮影依頼枠は早くから埋まり、D1とD2は満員、現在はD3の午前にわずか2枠を残すのみとなりました。以前公開した参考画像や、P18にある全工程のビフォーアフター比較をご覧いただければ、私のレタッチスタイルがお分かりいただけると思います。基本的な色調補正や肌補正、雑多な背景の整理は標準仕様として、クリーンかつ迅速に仕上げています。
今回投稿したサンプル写真からも私の撮影のこだわりが伝わるかと思います。大剣が叩きつける水しぶきの力強い躍動感、アーマー騎士の硬質な金属の質感、魔法の杖やほうきといった幻想的なエレメントまで、特定のシチュエーションにおける一瞬の動的な表情を捉えるのを得意としています。しかし、イベント会場での撮影はスタジオ撮影とは全く別物です。スタジオなら光を完全にコントロールでき、背景布一枚で自由に作画できますが、イベント会場特有の格子状天井や天井からの直射スポットライトは、顔を平坦に見せてしまったり、甲冑や光沢衣装に無骨な反射を作ってしまったりしがちです。
だからこそ、撮影依頼を受ける上でレタッチの存在を非常に重視しています。基本プランの補正だけでも環境の雑多感を60%ほどカットして人物を綺麗に浮き立たせることができますが、さらに圧倒的なビジュアルインパクトを求めるクライアントには、エフェクトの合成や光影の再構築、輪郭の微調整まで行うフルレタッチを推奨しています。現場の照明を完璧にするのは困難なため、撮影時はまず正確な露出で原稿を確保し、その後のデジタル編集でキャラクターの気品を引き出すアプローチをとっています。
会場でポーズを維持するのは想像以上に体力勝負です。空中浮遊や力強いアクションポーズは一見簡単そうに見えますが、実際は反人類的な筋肉の収縮を伴います。例えば、武器を大きく振るう緊迫感を表現するために、重い小道具を宙で固定したまま何度も静止し、水しぶきエフェクトの着地点と合わせる必要があります。エフェクト付きのハイクオリティな写真を望む方には、事前の体調管理と体力の準備をお願いしているほどです。大きな袖やロングマントをなびかせるカットでも、理想的ななびき方と髪の流れが揃うまで、同じ動作を十数回繰り返すことも珍しくありません。
また、作品の選定については自分なりのルールを設けています。自身の得意とするスタイルやレタッチの方向に合わせるため、性転換もの、乙女ゲーム、スポーツアニメの撮影依頼は基本的にお断りしています。これらは作品の魅力を否定するわけではなく、衣装構造や世界の空気感に対する私自身の理解が浅いためです。それよりも、装飾が華やかな二次元デザイン、左右非対称の仕立て、重厚なメカニック質感、ファンタジー要素を持つキャラクターの方が、衣装の見どころを構図の中心に据えやすく、得意とするドラマチックなライティングを最大限に活かせます。
さらに、見落とされがちなのが会場での映り込みリスクです。混雑するイベント会場でありながら、完成写真には通行人の腕や背中が入らない綺麗な画面が求められます。そのため、現場では常にロケーションと人波との戦いになります。人混みを避ける角度を見極め、大口径レンズで背景を暗くボカす工夫を施しますが、どうしても避けられない場合は後工程のレタッチで背景の障害物を取り除く労力をかけています。
事前に着脱する装備の確認を行うことも欠かせません。大ボリュームのパニエが入ったゴシックドレスや全身甲冑などは数十キロに及ぶこともあり、移動範囲や撮影エリアの事前計画が不可欠です。通路が狭い場合は引きの引き足が稼げず、バストアップを中心に切り替えるなどの判断が求められます。ウィッグや髪飾りの固定も重要で、混雑した会場での接触に備え、撮影前に安定感をしっかり確認することでテンポ良い撮影を維持できます。こうした下準備は大変ですが、雑多だった現場の写真が二次元の空気感を纏った美しい一枚へと変わる瞬間には、言葉にできない達成感があります。