今回の『Identity V 第五人格』「少女」- 蜃気楼(少女コスプレ)のスタイリングでは、全体の色調に青とピンクのグラデーションを採用し、逆光を活かして水面に浮かぶ泡沫のような幻想的な揺らめきを表現することを目指しました。メイクとスタイリングには多くの時間を費やしましたが、最も苦労したのはあのスパイラルカールのウィッグでした。美しいカール感を崩さないよう、丸一日かけて毛束を一本一本丁寧に巻き、形を整えて固定しました。頭頂部や両サイドを飾る花の髪飾りは数が多く、合計で2キロ近くの重さがあり、花を摘むようにうつむくポーズでは首に強い負担がかかり、撮影後は疲れ果ててしまうほどでした。顔にあしらった蝶のタトゥーシールは専用の特殊メイク用スキンボンドで固定し、アップの撮影でも粗が出ないよう境目を極めて自然に馴染ませました。アイメイクのブルーラメは花の髪飾りの色合いと調和させるため繊細な筆遣いで何層も重ね、つけまつげと合わせることで瞳の透明感と目力を際立たせました。
撮影時は白いバラを手にして顔の半分を覆うポーズを取りましたが、これは画面に前ボケとしての奥行きを与えるとともに、重い髪飾りによる表情の強張りを自然にカバーするためでもありました。光は夕暮れ前のドラマチックな逆光だったため、レフ板の位置を細かく調整して顔に柔らかな光を回しました。レタッチでは色温度をやや暖かみのあるトーンに整え、ハイライトをピンクパープル寄り、シャドウをグレーブルー寄りに調整することで、月光が泡沫へと沈み込んでいくような「冷たさの中に温もりを宿した」ドリーミーメイクの世界観を演出しました。衣装は幾重にも重なるレースでボリュームがありましたが、胸元や襟元のディテールを綺麗に見せるため、厚手のインナーは控えました。肌本来のリアルな質感を残しつつ輪郭を柔らかくぼかすことで、まるで精巧なビスクドールのような佇まいを追求しました。
この衣装は動きやすさが大きく制限され、振り返る動作すら一苦労だったため、ほとんどの所作をゆっくりと丁寧に行いました。横顔の美しいシルエットを際立たせるため、サイドからのアングルを念入りに探りました。このキャラクター設定の根底には神秘性と壊れそうな儚さがあるため、撮影ペースを落とし、レンズを見つめつつも鋭くなりすぎない柔らかな眼差しを意識しました。撮影全体を通して体力と集中力を要しましたが、完成した写真を見れば事前の準備はすべて報われたと感じます。古参プレイヤーとしてこのような幻想美あふれる世界観を形にできたことは、自分自身の創作活動の素敵な節目となりました。泡沫の奥に広がる静謐な空気感を皆様にも感じていただければ幸いです。