今回の写真は山奥の滝と渓流のほとりで撮影したもので、岩に打ち寄せる水流のダイナミックな躍動感が、川を流れる雛人形というキャラクター設定に完璧に合致していたためこのロケーションを選びました。撮影当日は曇り空で光が非常に柔らかかったものの、水しぶきによる湿気がとても強く、ウィッグや衣装の裾が濡れて肌に張り付きやすい状況でした。
絶え間なく回転するキャラクター特有の静謐な世界観を再現するため、カメラの前で何度も回転の所作を練習しました。赤と黒のドレスは回転時に大きな広がりを見せ、特にスカートにあしらわれた金色の渦巻き模様や赤いタッセルが、高速シャッターによって息を呑むほど美しい躍動感ある弧を描き出しました。ただ、水たまりに近い岩場は表面が非常に滑りやすく、履いていたブラウンのブーツの底が硬かったこともあり、足場をキープしてバランスを取るのにはかなりの集中力を要しました。
衣装のディテールも非常に細やかで、頭上の大きな赤いリボンと後ろに伸びる長いリボン帯にはしっかりとした重みがありました。長時間装着していると頭に負担がかかりましたが、カメラの前で完璧なシルエットを保つため、背筋を凛と伸ばした立ち姿を維持しました。アウトドア撮影とスタジオ撮影の最大の相違点は自然の風との調和にあり、風がリボンを美しく舞い上がらせてくれる瞬間もあれば無風の時もあるため、完璧な一瞬を捉えるべく立ち位置やスカートを振る力加減を絶え間なく調整しました。
カメラマンさんもアングルの選定に多くの工夫を凝らしてくださいました。例えば岩の上に横たわる構図では、高所からの俯瞰(ハイアングル)で捉えることで深みのある暗い岩肌を背景にし、赤いドレスの色彩を鮮烈に浮き立たせました。また滝の水流が最も激しい場所では開放F値を用い、背景の流水を白い幻想的な空気感へと美しくボカすことで、ダークトーンのキャラクターが画面の中で凛と引き立つように仕上げてくださいました。
屋外でコスプレを行う際は、虫刺されや長時間の水場立ちによる足元の冷えなど予期せぬ困難がつきものですが、完成した写真の光と影、そして美しいラインの調和を目にした時、注いだ努力のすべてが報われたと実感しました。今回の『東方Project』鍵山雛 コスプレを通じてキャラクターへの理解がいっそう深まり、一見儚げでありながらどこか強い執念を秘めた彼女の気品が、この雄大な大自然の風景の中で見事に表現されました。
全体を通してハードな撮影だったものの、スカートがふわりと回転した瞬間、せせらぎの川や背後の滝と本当に一体になれたような感覚を覚えました。レタッチでも現地の冷涼な寒色系のトーンを大切に残すことで、キャラクターが背負う孤独感をいっそう際立たせています。