今回のロケーションには屋根付きの廃工場を選定しました。周囲の環境光は薄暗く、天井の格子状の鉄骨構造と紫のLED照明が相まって、極めて硬質で冷徹なインダストリアル感を醸成。この無機質な廃工場と、私が身に纏うフリルたっぷりの青白のメイド服との間に鮮烈な視覚的コントラストを生み出すことを狙いました。衣装はアーミヤを象徴するうさ耳メイド服で、何層にも重なるスカートのふんわりとした広がりはジャンプやターンなどの躍動的な動作にぴったりでしたが、着用中は常に美しい姿勢を保つ意識が必要でした。
写真の核となるアクションは、巨大な白ウサギキャンディをトスしてキャッチする動作です。このビッグサイズのキャンディ小道具はずっしりと重く、空中にふわりと浮き、あたかも軽やかに投げ上げたり受け止めたりしている決定的一瞬を捉えるため、何度もテイクを重ねました。踏み切りのリズムを掴み、腕を強張らせずに自然に伸ばしつつ、スカートが軽やかに広がりつつも着崩れしないよう flutter の軌道をコントロールしました。
足元には白のクルーソックスと黒のクラシカルな革靴を合わせ、ミニ丈のスカートと調和させて脚のラインをすらりと長く見せ、視線が自然と脚の所作へと向かうよう演出。頭上の茶色いうさ耳の造形も大きな見どころで、後ろのポニーテールや髪飾りと響き合ってキャラクターの愛らしさを一層引き立ててくれます。この二次元撮影のプロセスでは、光が輪郭線を極めてシャープに描き出すため、ウィッグや前髪のカール感をこまめに整えてベストな状態を維持しました。
実際の現場には写真のような芝生はなく、緑の草地はレタッチ段階で合成したものです。工場の無機質で冷たい光を和らげ、画面にファンタジックな温もりを添えるためにこのアプローチを取り入れました。現像では背景を適度に落として手前の芝生を引き立たせ、人物に美しいエッジライト(輪郭光)を当てることで、暗い背景から被写体が鮮やかに浮き上がるよう調整。カメラマンの黄昏氏は現場の点光源やライン照明を巧みに背景に活かし、画面の奥行きを豊かに表現してくれました。
この作品は、イベント写真の中でもかなりの大掛かりなプロジェクトとなりました。大混雑のイベント会場において、小道具を配置し周囲の迷惑にならない広々としたスペースを確保するのは至難の業でした。大きなキャンディの小道具を会場へ搬入するだけでも一苦労で、1カット撮り終えるたびに巨大なプロップを元の位置へ戻し、次の体勢を整える作業を繰り返しました。キャラクター本来の佇まいを再現するには、表情や所作の自然さが何よりも大切で、ジャンプ時の足の角度や上体を後ろに反らせる加減を何度も試行錯誤。空中に浮かぶ小道具とスカートの翻りを完璧なタイミングで捉えてくれたカメラマンさんの的確なポージング指導には感謝しかありません。レタッチでは人物の輪郭光を丁寧に整え、主役を引き立たせるために彩度をわずかに持ち上げつつ、背景の紫や緑の光源のノイズを抑えて、幻想的な世界観とリアルな記録写真としての質感が見事に調和した一枚に仕上がりました。アーミヤという存在への理解がさらに深まった、忘れられない撮影体験です。