この衣装はディテールの微調整に予想以上のエネルギーを費やしました。特に髪飾りの部分は、赤いレースやリボンにオフホワイトの広幅のフリルを合わせ,さらにアシンメトリーなタッセルやリボン紐の装飾を加えているため、全体のレイヤー感(立体感)とボリュームのバランスを取るのに苦労しました。髪型は重ための姫カットとストレートのロングヘアをキープ。暖色系の提灯の光の下で黒髪が一塊に潰れてしまわないよう、撮影時は毛流れの向きに特に注意を払いました。
ロケ地には、伝統的な中国建築特有の回廊を選びました。深みのある木製の透かし彫り窓枠や幾何学模様が非常に年代気溢れる情緒を醸し出し、ランダムに吊るされたいくつかの赤提灯と相まって、静寂でありながら温かみのある空間の空気感を演出しています。この赤白の巫女スタイル衣装は、こうした光と影のシチュエーションで美しく際立ち、ダークトーンの背景に人物のシルエットが溶け込んでしまうのを防いでくれます。撮影時は主に提灯の暖色系の光をメイン光源とし、余計なストロボによる強引な補光は行わなかったため、ナチュラルな環境色がそのまま活かされた提灯の光と影の撮影となりました。
撮影プロセスでは2つの異なる佇まいを試みました。正面を向いた立ち姿のカットでは、細長い黒の小道具を手に、眼差しを少し和らげ、胸元の複雑な結び紐やパッチワーク調の市松模様のディテールを強調することで、視覚のフォーカスが襟元や首元に集まるようにしました。一方、木枠の窓に寄り添った横顔のカットでは、指先を軽くあごに添え、視線をわずかに伏せることで、赤提灯が投げかける光と影の中に身を委ねました。背景に連なる赤提灯とシルエットのような窓枠が、素晴らしい奥行き感を生み出しています。
今回のセットの環境配置はこの衣装のスタイルにこの上なくマッチしていました。木製窓枠の木目や素材感が重厚な歴史を感じさせ、赤い提灯の光に照らされることで、木肌のすべての光沢がとても柔らかくなり、画面に素晴らしいベーストーンを提供してくれています。それとは対照的に、この衣装の赤白が交互に織りなすレースやリボン紐が精緻な美しさを添え、重と軽、暗と明がレンズの前で見事なコントラストを成しています。
メイクやヘアに関しては、髪飾りのボリューム感に合わせるため、トップのボリュームや前髪のニュアンスを何度も微調整し、正面から見たときに頭部が重苦しく見えないように配慮しました。同時に、レタッチ時の色調補正では背景の暖かみのあるオレンジトーンと、人物の衣襟や袖口の赤の彩度を維持することに注力し、画面全体がくすんでしまわないように仕上げました。カメラマンさんもスナップの際、小道具と身体の動きの調和を非常に重視してくれ、例えば細い杖を握る力加減や、顔の横に添えた指先の絶妙なアールなど、できる限りナチュラルな佇まいで表現できるよう努めました。全編を通して光と影の分布が不均一になるという課題もありました。提灯は点光源であるため、身体の片側に顕著な陰影ができやすいからです。しかし、まさにこの不均一なライティングこそが、写真にさらなるストーリー性を与え、まるで本物の物語のワンシーンがそこを流れているかのような画面を作り出してくれました。最終的に出来上がった完成写真を見ると、木枠の窓にあしらわれた彫刻、赤提灯の柔らかな発光、そして衣装の細かいディテールまでが鮮明に収められており、期待以上の『東方Project』博麗霊夢コスプレ作品に仕上がりました。