ユエジョン・リンの『寄明月』のイントロが鳴り响いた瞬間、あの時代ならではの記憶が彼女の歌声とともに一瞬にして蘇ります。今回の「流魚驚鵲」企画のために、私と天依(テンイー)ちゃんは長い時間をかけて準備してきました。まずは私のソロカットを数枚、先行して公開します。
実は、最初にこの衣装デザインを決めた時、私たちは何度も検討を重ねました。ユエジョン・リンには数多くのクラシックな衣装がありますが、今回は表达の持つ力強くもお茶目な気質を残しつつ、古風コスプレの情緒を融合させて表現したいと考えました。そのため、衣装の素材には、暗紋(ジャガード調の地模様)が入り、ほのかな光沢感のあるピンク色の生地を特別に選びました。襟元の白い切り替え生地や、胸元の赤黒が交ざり合う四角い飾りボタンは、このスタイリングにおいて非常に特徴的なディテールです。この2つの部分の質感を表現するために、型紙作りだけでも何度もやり直しました。袖とスカートの裾は、あえてボリュームのあるドレープを効かせた流れるような仕様にしてもらったので、少し歩くだけでまるで仙女のようにふんわりと舞い上がる感覚が生まれます。ヘアスタイルは少し空気感を持たせた高めのポニーテールにし、赤ブラウン系でぼかしたアイメイクやリップカラーを合わせることで、視覚的にしなやかでありながらどこか神秘的な状態を演出しました。
撮影の背景には、今回のために特別に組み上げたダークトーンの「月下の蓮池」を用意しました。黒の背景は実は最もライティングの技術が試されるものです。なぜなら、鮮やかな赤い衣装、ピンクと白のグラデーションが美しい巨大なプロップの蓮の花、正式には輝く満月を、真っ黒なベースから美しく浮かび上がらせなければならないからです。照明担当の方はスタジオ内に主光、サイド光、背景光を配置し、私の顔のメイクをクリーンに見せつつ、衣装の暗紋が光と影の中にうっすらと浮かび上がるように調整してくれました。手に握っている蓮の実を模した団扇や長い蓮の葉の茎は、どれも撮影において構図をサポートするための重要な小道具です。
今回の撮影の中で、私が一番気に入っているのは木舟の中に座ってカメラを見上げている(仰視アングル)カットです。満開のピンクの蓮の花と広大な荷葉(ハスの葉)に全身を幾重にも包まれ、頭上には微光を放つ巨大な満月が浮かんでいます。この構図を綺麗に収めるために、何度も座り方を微調整しました。木舟の縁は非常に狭く、その上で衣装の裾や木の上に散りばめられた赤いチュール(紅紗)を自然に配置しなければならなかったからです。黒のストッキングもこのアングルからちょうど綺麗に見え、オフショルダーの衣装デザインと相まって、キャラクターの活発さを維持しつつも、どこかドキドキさせるような視覚的要素を添えてくれています。
夜の雰囲気を持つ古風コスプレ写真を撮影する際、最も避けたいのは画面が雑多で散らかって見えることです。私たちのセットには假山(岩組み)、小舟、花の枝、蓮の葉など多くの要素がありましたが、ライティングの取捨選択(引き算)によって、画面が窮屈に見えるのを防ぎました。むしろ、黒い背景が無限に広がっていく感覚のおかげで、あの月が持つ清冷(クール)な空気感がより純粋に際立っています。撮影の途中でポーズを変える際、高い位置にある蓮の枝にどうしても体が当たりやすく、その度にカメラマンさんに背景を整え直してもらうことになりました。私も衣装のストラップが肩から滑り落ちないよう常に角度に気を配り、小道具を持つ手の力加減を維持しなければならず、こうした大がかりなシチュエーションでの撮影では非常に細かな配慮が求められました。
この衣装は実はかなり重く、特に幾重にも重なった生地やワイドな袖は、木舟の中で振り向いたり手を振ったりするたびに引っかかってしまうことが多かったです。しかし、仕上がった作品を見た時、あのしなやかで風になびくような浮遊感がしっかりと表現されていました。ソロ撮影とペア撮影では体験が大きく異なり、ソロ撮影ではキャラクターの状態により専念して没入することができ、月下の妖精のような清冷な美しさをストレートに伝えることができます。今回の「流魚驚鵲」企画は、事前の準備段階から本当に多くのこだわりを詰め込んできたので、完成した写真集を皆さんに気に入っていただければ嬉しいです。
「『寄明月』をユエジョン・リンが歌っていたことを誰が覚えているだろうか」という、二次元コスプレの古参プレイヤーに対する思い出補正は、やはり胸に刺さるものがあります。このような古風コスプレの情緒と高い再現度を兼ね備えた二次元コスプレ写真集をもって、あの頃の記憶に応えることは、非常に有意義なことだと感じています。この衣装とシチュエーションの組み合わせ、さらに光と影の緻密なコントロールが、「流魚驚鵲」の表現したかった夢幻的な雰囲気を完璧に引き出してくれました。この後、天依ちゃんと同じ画面に収まるペア写真でもまた違った化学反応が生まれるはずです。まずは私のソロカットを先行して公開し、シリーズ全体のスタイルと基調をこれらの数枚でしっかりと提示できたと思います。